2017年10月17日火曜日

#008 巨大キツネ祭大阪公演の話

2017年10月15日(日)
QB METALは大阪城ホールで行われた【巨大キツネ祭り in JAPAN 大阪公演】に参加した。

本記事は、その当日自分が存在していた【MOSH'SH PIT/L7ブロック】の様子を、主観全開で書き記したものである。


……


ライブ当日、天気は予報通り雨。

外でなかなか身動きが取れないのは難儀だが、雨や寒さ対策は万全にしていたので、それほど憂鬱な気持ちになることはなかった。
13:30過ぎ会場に降り立った自分は用意しておいたレインコートを着て会場周辺を歩き回った。
大阪城公園駅からライブ会場である大阪城ホールまでの道のりには飲食店が立ち並んでいたのだが、その中や軒下で雨をしのぐメイトの姿が目立つ。
自分も一周してから軒下に待避し、その後北陸メイト会の数人と合流し開場時間まで親交を深めた。


PITの集合場所に到着したのは15時半だったか。
丁度L,R1ブロックの呼び出しが始まっていた。
相変わらずやまぬ雨の中。
30分ほど待ったのちL7ブロックの入場時間が訪れた。
チケットやTHE ONE ID、鞄の中身確認、金属探知機などを経て2列縦隊でPITへと歩いていった。


PIT内での位置取りは下手ギリギリの柵をつかんだものの1列目でも2列でも見え方は変わらないと瞬時に判断。
音のバランスを重視し2列目ではあるがPITの右よりに移動した。この判断は良かったと開演後に実感することとなる。
Judas PriestやDragon Forceの曲が流れる中、自らのコンセントレーションは高まっていく。
待つこと1時間弱。暗転。待ち望んだ巨大キツネ祭り大阪公演が、遂に開幕したのだった。


……


五色の狐火が一つになる紙芝居からBABYMETAL DEATHのイントロへと流れる巨大キツネ祭りの様式美。

メイトを戦闘態勢にするのは簡単だ。

オイ!オイ!オイ!オイ!

この4回で即対応。ギアは最大まで上がる。
それは、1速からいきなり5速へとギアを入れるような無茶な話だが、数回ライブに参戦すればもうそういう体に訓練されてしまうのだから仕方あるまい。
今日も安定の、そして最高のBABYMETAL DEATHだということをイントロだけで確信する。
SSAと同様の5連スクリーンに3人が映ると歓声が上がった。
アリーナは平らなので見えづらかろうと覚悟をしていたが、思ったより良く見えた。
今回のスクリーンは配置設計がとてもよくできていると感じた。

BxAxBxYxMxExTxAxL

魔法の9文字を叫び、DEATHでジャンプ!
PITの内部はかなり余裕があるようで圧縮が起こる雰囲気もなかった。
ジャンプを安心してできるのがその証左であった。
またこのPITでは多少位置が変わったところで見え方が大きく変わることもない。
皆それを理解しているようだった。

2曲目ギミチョコ!!、3曲目メギツネを前半にぶつけてくるストロングスタイルなセトリはSSA2日目からの3公演連続。
休む暇も無く続くビート、ずっきゅん!どっきゅん!ソレソレソレソレ!と叫び続ける。
それは混沌だがそれと同時に得られるのは魂が開放される感覚だ。

神バンドソロのイントロで巻き起こる手拍子。
森センセイの手を開いて大きな音で拍手するというアレではないが、
何度もライブに参戦していると、どうすれば大きな音が出るかと自ずから工夫をし始める。
少しでも大きな音でライブを盛り上げようと手を叩けば、それに応えるかのように神バンドの演奏が始まった。

今回のソロで感じ入るのは藤岡神のハーモニクス。
メタルの激しさの中で奏でられる美しさはこれまでの中でも一際だ。
続く大村神、BOH神そして青山神の刺激的な演奏に大いに盛り上がり再登場する3人。
4曲目のヤバッ!の始まりだ。

ここでPIT内にも変化が、自分の隣の男性が少し下がったのか位置取りが変化する。
そこに入り込んできた女性のヤバッ!に対する意識の高さが隣からひしひしと感じ取れるのだ。
サビに入ると振りコピまでし出す彼女に抱く感情はまさにヤバッ!

このままではいけない。

いやまあ、別に彼女が隣の凡夫を意識しているとは到底思えないが、
ここでボルテージの高さで敗北する訳にはいかない。

負けられない戦いがそこにはあった。

自分が勝手に妙な対抗心を燃やしたことは大いなるプラスに作用する。
位置取りの判断がよかったと先述したのはこのことだ。
彼女の振りコピが大きくなっていくのに呼応するように自分のヘドバンが激しさを増していった。

傍目から見れば、スクリーンも見ず音にノリまくる自分の方がよっぽどヤバッ!なのだが、人からどう見られているかなど考えていては始まらぬし、そんな感情など毛頭ない。
自分がするべき最善がヘドバンなのだと信じて、ひたすら頭を揺さぶる。

そんな状況は紅月に入っても続いた。

ズッタンズズタンズッタッズッズターン!ズッタンズズタンズッタッズッズターン!

口ずさみながら音に対して意識を高めていくと、どんどん後戻りの出来ない位置へと自分が歩みを進めているのを実感する。
頭が揺れることで視界が揺れ、目が半開きになり、照明が紅く点灯しているにも拘わらず、光は明滅する。そしてその刹那―


心のリミッター、外れました。


「冷やし中華、始めました。」の売り文句のようにカジュアルに外れた自分のリミッター。
そんな自分の行く先はYes! Change the World!
世界を超え、時を超え、そして未来さえも超えていく。
幾千もの夜を超えてきたSU-METALの歌声、そして神バンドの演奏と一体となった感覚。
それに身を任せるように体をうねらせる。頭をゆする。
こうやって心が開放されたのはこれで何度目だろうか。何度やってもこの境地に到れることに対する幸福感に恍惚となる。
5曲目でのリミッター開放は隣の女性の存在が鍵だった事は間違いなかった。
ライブは周りに一緒に盛り上がる仲間がいてこそだということを再認識する。彼女には本当に感謝しても感謝しきれない。
今日の個人的なハイライト、それは紅月(と隣の女性)だった。


……


6曲目GJ!、7曲目シンコペーション、8曲目META!メタ太郎
大阪城ホールで次々と物語が紡がれる中、L7ブロックは一つの限界を迎えていた。
それは限界というか不足と言うべきか。何かが足りないという飢餓感か。
SU-METALが近づいてきて、そのブロックを直で見れば「てめぇらの本気はそんなもんか!」とお叱りを受けるであろう空気感というか。

このままで終わってほんまにええんか?

そんなことを多くのメイトが思っていたのだろう。


9曲目イジメ、ダメ、ゼッタイ!で満を持してその現状が打破される時が来た。
WOD OF DEATHコールでその萌芽を見せ、ルルルーあたりで横の人間にやや押されたことで確信した。
誰一人としてその意味を分からぬものはおらず、打破したいものは前へ、そうでないものは後ろへと自らの位置取りを移すべく動き出す。そして…

Ah-!

左右から人がぶつかり合いそのままモッシュへと発展。自分も当然その輪に参加しもみくちゃになる。
自分はこれまでPITに数度参加したものの、モッシュの発生しない現場や、発生地点から遠い状況が続きこれまで参加したことが無かった。
それだけに念願が叶った形だ。
予想不可能な方向に押され体勢を維持するのに必死だが、わちゃわちゃすることで高揚していくのは事実。
しかし、体力の無さという現実にも直面し、一度参加しただけで息が絶え絶え。
更にはちょっとモッシュしただけなのに脇腹も痛くなり始めた。
長距離走などしている時にコンディションが悪いとなるアレ。
このタイミングでかと間の悪さと運動不足を呪うが、その後も断続的にモッシュやサークルが発生。
痛いし、息上がっているしで厳しい状況なのだが、ひとたびサークルが発生してしまえばその中に入らないわけにはいかない。
それにサークルに参加していると何故か脇腹が痛くないのだ。
これはもう乗るしかないだろうこのビッグウェーブに!


KARATEのイントロでは十数人で肩を組み、オイ、オイと叫びブロックの連帯感は更に高まりを見せる。
サークルをすれば始めはブロック内の数人だったが、L8ブロック最前の人もハイタッチに参加しブロックを越えた交流が発生。
周辺エリアの高揚感はとどまることを知らない。
間奏では、実際に倒れ役の人が現れ、数人が手を伸ばし助け起こそうとする事案が発生。
シラフでやればただのミニコントになってしまうが、ライブとなれば話は別。
BABYMETALの3人と同じ動きをやることで一体感が生まれ、BABYMETALのライブと言う一つのショーへとのめり込んでいく感覚。
恥も外聞もない。自分も驚くほど自然に役割に応じていた。
反応するというかそれはもはや反射と言えるのかもしれない。
現に自分は中央に向かって"EVERYBODY JUMP!!"と叫び、ジャンプへと身を投じていた訳だし。


11曲目ヘドバンギャー!!
サークルやモッシュには磨きがかかり、ブロックの仕上がり具合はもはやリミッターのはるか先へと解き放たれてしまっていた。
間奏が始まればドゲバンの準備に迷いなくしゃがみこむブロック中央の御一行様。
ここでBABYMETALに捧げる五体投地まで出来るなど感涙モノだ。
全霊を込めたドゲバンでの想いが3人に通じていれば有難い話。
今年の上半期はヘドバンギャー!!が全くプレイされてなかったので、五大及び巨大での復権は個人的に本当に嬉しい。
その喜びをかみしめながら、土下座し、ヘドバンし、叫び、回り回った。


12曲目Road of Resisitance
公演がそして第5章そのものが終幕へと向かう中、L7ブロックもクライマックスを迎えようとしていた。


さあ、時は来た


イジメ、ダメ、ゼッタイ!からつなげてきた狂乱の渦。
その最高にハイな状況をどう締めるのか、その答えを出す刻限が来たのだ。

そのような中、左側男性陣が一人の女性をリフトしようと準備を始める。

サークルの中央に陣取るのか?しかしここはWALL OF DEATH案件。これでは片手落ちだ。
そう察知したのか、右側にいた男性が女性を呼び、肩車。もう1騎が無事完成した。


さあ、時は来た



メギツネ2騎を擁した騎馬戦の始まりだ!!



One! Two! Three! Four!

歓声と共に巻き起こる本日2度目のWALL OF DEATH!!

2人の女性が騎馬の上でキャットファイト(メギツネファイト?)を演じる。
下にいる者はモッシュに勤しみつつ、リフトされた2人が落ちないようにアシスト。
騎馬戦の時に落ちないように身構える体育教師になった気分だ。
イントロが終わりリフトから女性達が降りた後も断続的にモッシュが発生する。
最後の力を振り絞り、輪の中へと身を投じる自分。
疲労はピークに達しているはずなのにハイタッチをする力は強くなっていることが分かる。
周りのボルテージも最高の状態。
ラスト2曲目にして最高に最凶にもみくちゃになった。
そのエリアにいる人の全てがこのライブで解き放った燃える鋼鉄魂によって、L7ブロックはMETAL RESISTANCEを完遂したのであった。


……


いつの間にかTHE ONEが流れている。
SU-METALの歌声に浸りながらライブを反芻する。
最高のライブだ。
BABYMETALのライブに参戦するといつもそう思う。
だが最高ってなんだ?
「最も高い」のだから最高ってのは1つしかないんじゃないか?
確かに言葉の定義としてはそうなのかもしれない。
最高!最高!と軽々しく口にすべきではないのかもしれない。
だがBABYMETALのライブにいたっては「高い」というのにもいろいろな「高い」があるのではないかと自分は思う。

時には肉眼で3人を見ることが出来たという意味で「高い」

時には自分の求めていたものを見つけたという意味で「高い」

時には遠くから音と映像に浸ることが出来たという意味で「高い」

時には周りとの一体感によって全体で最高に盛り上がれたという意味で「高い」

そしてそれはどのライブでも「最も高い」

自分が参加した巨大キツネ祭りを比べてもそうだ。
会場が違うだけでセットリストは全く一緒。演出もほとんど変わらない。

しかし、双方で体感した事、抱いた感情、すなわち登った「高み」は全く違っていたし、どちらも素晴らしく尊い。

だから結局、自分の中でBABYMETALのライブは最高と言う結果で終幕を迎えることになるのだ。っていうかもうそういうことでいいじゃん。

思考停止を多分に含みながらも「最高」のライブに酔いしれる自分。
THE ONEのアウトロが心地よく流れていた。
こうしてMETAL RESISTANCE第5章は静かに幕を閉じた。


……


外に出ると幾分雨は弱まっていた。カッパを再び取りだすのも億劫で生身で外へと飛び出す。
とは言え歩いている途中肌寒さを感じ、風邪をひかないよう物販でパーカーを購入。
元から買うつもりはなかったのだが、最高のライブを見せてくれたチームBABYMETALのご祝儀だと思えばむしろ払い足りないくらいだ。


五大キツネ祭りの時や巨大キツネ祭りSSA公演の時は翌日が仕事ですぐに帰宅する必要があったが、今日は未だ予定がある。
会場前に急遽ねじ込んでもらったアフターパーティ。
その場所でこの感動を共有する仲間が待っている。
自分自身、どのように今日の「最高」な体験を話すのだろう。
そして皆はどのような今日の「最高」な体験を話してくれるのだろう。
そんな事を考えると心が躍った。
夜の街へと歩みを進める自分の足は自然と速くなっていた。