2017年4月30日日曜日

#006 RED HOT CHILI PEPPERS マイアミ公演の話

BABYMETALがまた一つ有難きことを起こした。ある者は「チリチョコ!!」と呼び、ある者は「マイアミの奇跡」と呼ぶ4/30(日本時間)に行なわれたRED HOT CHILI PEPPERSのマイアミ公演はなんというかもう言葉に表せない。そもそも、BABYMETALのやることは基本的に言葉に表せないのだが、それに輪をかけて言葉に表せない。だが、この素晴らしい公演の軌跡を残しておかないわけにはいかない。よって今回も可能な限りであるが書き記していきたいと思う。

この公演の「ギミチョコ!!」の演奏、それは滅茶苦茶なものだったのだと思う。
音楽理論が無い自分に語る資格はないのだろうが、3年以上かけて神バンドのメンバーが作り上げてきた完璧な「ギミチョコ!!」でないのは確かだ。言うなれば今日のそれは狂奏。BABYMETALを知らない者からすれば、なんなのこれ?という混沌。

しかし、最高の狂奏だ。BABYMETAL、神バンドそしてRED HOT CHILI PEPPERS。彼らが地力持っていなければ奏でることのできない狂気のハーモニー。というか宴。そう考えるとこれは狂宴とも呼べるのかもしれない。


RED HOT CHILI PEPPERS。自分が彼らに抱くイメージは常に楽しいこと、面白いことを求め続けてきたバンドというものだ。
ペニスソックスや火吹きヘルメット、電球の被り物など、破天荒なエピソードは枚挙にいとまがなく、パフォーマンスで観客を楽しませようと多様なアイデアを繰り出してくる。

年齢を重ね、バンドメンバーの交代もあり、様々な出来事を経ることで彼らのパフォーマンスの仕方も大きく変わってきている訳だが、常に自分たちが音楽を楽しみ、観客を楽しませるという点でRED HOT CHILI PEPPERSというバンドは一本筋が通っているのではないだろうか。

自分がそう感じる理由の一つは2013-14シーズンのスーパーボウルハーフタイムショーに彼らがブルーノ・マーズのゲストとして出演した時のエピソードにある。

ハーフタイムショーに出演するにあたって、RED HOT CHILI PEPPERSはボーカルのアンソニー以外はテープ演奏でやるようにNFLから要求された。NFLは今やアメリカで最も人気のあるスポーツ。その頂点を決めるスーパーボウルのハーフタイムショーは何千何億もの人間がTVの前で視聴している。そういった点からNFLとしては失敗するリスクを冒すわけにはいかず、先のような通告をRED HOT CHILI PEPPERSへとなしたのだった。

生演奏でライブをやることにこだわりのある彼らとしてはそのような通告は受け入れがたいものであった。しかし、逡巡しながらも最終的に彼らはその通告を受け入れハーフタイムショーに出演した。その時のことについて、ベースのフリーが公開書簡で答えた訳文を一部抜粋すると…



今回のスーパー・ボウルのライヴ・コンセプトの話が持ち上がった時、俺たちの間でもやるべきかやめるべきかで混乱状態に陥ったんだけど、でも、最終的にこれは本当にシュールで、一生に一度あるかないかのクレイジーなイヴェントなんだから、みんなで楽しもうってことでやることに決めたんだ。みんなでやろうと賛成する前には俺たちも時間をかけてよく考えてみたし、それだけじゃなくてそれぞれにもいろいろ話し合ってみたわけで、俺だったら俺が一番尊敬しているミュージシャン仲間とかにも相談してみたんだけど、みんなも自分たちに声がかかったらやるはずだって言ってくれて、むしろこれをやれるっていうのはとんでもないことだし、何も構うことなんかないじゃないかってことだったんだ。




※フリーの公開書簡の全訳文は→ http://ro69.jp/news/detail/96662

RED HOT CHILI PEPPERSにはプライドがある、これまでやってきた生演奏というスタイル対する自負がある。また、ファンはそのようなスタイルのRED HOT CHILI PEPPERSを応援してきたわけだからそれを曲げるとなれば批判が出るのは当然だろう。
BABYMETALでいえばフロント3人だけが生歌で神バンドが当て振りでやるようなもの。デビュー当時の骨バンドならともかく今や神バンドには必要不可欠。BABYMETALが仮に出演するとしても受け入れるのは難しいだろう。

しかしRED HOT CHILI PEPPERSは受容した。それは誇りや既存のスタイル、批判にさらされるリスクよりも面白さ、おかしさ、シュールさ。二度と体験できないようなクレイジーな楽しさが彼らにとって重要なことだったからだ。



実際のパフォーマンスはご覧の通り。

たった3分間の出演だったが、彼らはそのパフォーマンスで存在感を示しハーフタイムショーの歴史に名を刻んだ。



翻ってマイアミ公演である。
そもそもBABYMETALに声をかけること自体がもうすでに異常だ。こんなことを言うとメイトのみなさんに怒られるかもしれないが、デビューして5年程しかたっていない、音楽がクレイジーすぎて賛否両論を招いている、まだ成人になってすらいない東洋の女の子3人組。30年戦士のRED HOT CHILI PEPPERSがBABYMETALに一緒にやろうと声をかけること自体がどうかしているのだ。

そんなどうかしていることが現実となった昨年の12月公演ではどうかしていることが立て続けに起こったのは皆さんの記憶に新しいだろう。そして更にどうかしていることに4月半ばから始まった2度目のサポートアクト、アメリカ遠征。その最後たる4/30(日本時間)の本公演だ。

そもそも種はまかれていた。オーランド公演前、チャドが意味深なつぶやきを見せた。

それは、最終マイアミ公演でチャドメタルが出てくるだけでは終わらないということを匂わすものであった。
メイトの期待は高まった。当然自分もその一人だ。またどうかしていることが起こる。これがワクワクせずにいられようか。

公演当日、自分はチャドの策略にまんまと引っ掛かり朝からテンションが上がっていた。ゆっくり起きても十分視聴可能なのに5時頃に起きてしまったのがそれを物語っていた。

9時からジャック・アイアンのアクトが始まり、BABYMETALは9時40分からの模様。ここら辺は予想通り。TLを追うべく待機し続けた。BABYMETALのアクト開始5分前。なんと白塗りに扮したフリーの画像がアップされた。

まさかのネタバレだったが、直ぐに見なかったことにしようと気持ちを改めた。あれはファンのコスプレか何かだろう。そう思うことにした。もっとも、フリーの白塗りはある程度予想出来ていたというつぶやきがちらほらと見られた。しかし、これがまかれた種の一部だとこの時は知る由もなかった。

9時40分、アクトが始まったがなかなか配信の神が見当たらない。あわだまフィーバーやKARATEの一部を見ることは出来たが全貌を窺い知ることは出来ず、結局一番気になっているギミチョコ!!を生で見ることは出来なかった。

粘り強くPCの前やスマホを見ながら待機する我々の下にまず投稿されたのは写真だった。




はい??神が??7人????


ぱっと見ただけでは理解しがたい写真。どうかしている写真。


意味が分からない。情報が錯綜する。あふれ出る知的欲求。早く全貌を知りたいと新着ツイートが来るたびクリック。そしてF5連打。


そこには白塗りをした神が8人いた。ついでに頭が真っ白になり人の数すら数えることが出来なくなった我々もいた。


訳の分らぬままTLがWALL OF DEATH、サークルモッシュで思考がぐるぐると回転する中、インスタグラムに動画が投稿された。



※↑の動画はYouTubeのもの

そこに映っていたのがまさに狂奏。フロント3人の後ろで荒ぶる8人の神々たちに笑いが止まらない。ニックネームのごとく飛び跳ねるFLEA-METAL、ヘドバンしまくってるJOSH-METAL、パワフルに叩きまくるCHAD-METAL、Too Too Lateで謎の存在感を示すトランペットのNATE-METAL(そもそも誰なのかがはっきりわかるまで結構時間がかかった)。既存メンバーにプラスされた8柱の神による狂宴。何度見ても笑いが止まらないし、滅茶苦茶。

一方、今日は完全に神々のパフォーマンスに喰われてしまったわけだが、フロント3人はよく見ると完璧だった。SU-METAL,YUIMETAL,MOAMETALが3年以上かけて作り上げてきたギミチョコ!!の集大成が発揮されていた。むしろ後ろから迫りくるむせ返るほどの白い熱量を力に変え、RED HOT CHILI PEPPERSを見に来たファンのボルテージを最高潮に導いたのだった。

冒頭で実力が無ければこのパフォーマンス出来ないと自分が書いた理由として、今回のギミチョコ!!はフロント3人の秩序と神8柱の混沌がぶつかり合う構図だったからだと考える。すなわち彼女達が完璧に「ギミチョコ!!」をこなせばこなすほど、そして、神々が「ギミチョコ!!」を滅茶苦茶にすればするほどそこに楽しさが生まれる、見ている側としては最高に盛り上がることが出来るのだ。

そしてなによりもRED HOT CHILI PEPPERSとBABYMETALの両者に共通するのはまさに音楽を楽しんでいること。またお互いがリスペクトしあっている関係であること。それにより双方が双方の為に力を尽くそうとする。お互いがお互いの力で最高のライブをすべくやるべきことをやる。その力と力が間違って融合してしまうような舞台があったとしたら…

その結果はマイアミ公演のギミチョコ!!で示された。楽しいパフォーマンスを追い求め巡業を続けてきた彼らにとって、それが最高に楽しいものになると確信するのは造作もないことだったのかもしれない。もっとも彼らが想像する以上の素晴らしい混沌が出来上がってしまった訳だが。

最高の公演が終わった。ロブ・ハルフォードとのコラボの時も書いたのだが、これがあるからこそBABYMETALを応援することを自分はやめられない。幾つものどうかしていることが重なり、最高のどうかしていることが生まれる。そんな数々の奇跡を起こしてきたBABYMETALに次なる奇跡を期待せずにはいられない。6月のKORNサポートアクト、そしてキツネ祭り、まだ明らかにされていないフェスなど既にドキドキが止まらない状態だ。

最後に今回の公演を演出してくれたRED HOT CHILI PEPPERSとBABYMETAL及びそこに携わったスタッフ。そして、動画を投稿配信していただいたメイトの方々。多くの人の有難き力によって自分はこんな素晴らしい気持ちになっています。本当に本当にありがとうございました!